日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3044
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動物
デジタルビデオカメラを利用したニホンジカのスポットライトセンサス法の開発
*山内 仁人岡田 充弘小山 泰弘
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抄録

1 はじめに
 ニホンジカ(Cervus japonica、以下シカ)による農林業被害の拡大は全国的な問題となっている。長野県でも被害の顕在化が著しく、2001年に特定鳥獣保護管理計画を策定し、その対策を講じている。計画の運用にあたっては、適切なモニタリングにより効果を検証し、保護管理計画を修正していく必要がある。
生息状況の動態を把握するモニタリングのうち、スポットライトセンサス法は機材も簡易で比較的容易に行える手法である。しかし、夜間におけるシカの視認や、個体の識別(体格・角の有無など)、数の把握にはそれなりの熟練を要する。ところが、現地で実際に調査にあたる担当者は野生鳥獣調査の専門家ではない場合が多い。
そこで、スポットライトセンサス法に夜間撮影機能付きのデジタルビデオカメラ(以下DVC)を用いることで、比較的簡易に調査を行う方法を検討した。
2 調査地と調査法
(調査地)
近年シカによる被害が増えつつある本県中部の塩尻市東山地域(高ボッチ山西側斜面)で実施した。調査ルートは標高750mの山麓部から1600mの山頂部にわたる。なお、この地域での生息状況は明らかになっていない。
(調査法)
乗用車で夜間低速走行しながらサーチライトを照射し、シカの目の反射・姿を肉眼で視認した。併せて、DVCの夜間撮影モードを用いてモニターで視認しながら、可能な場合には撮影を行った。
3 結果と考察
 調査は2003年3月から12月までの間に14回行った。調査距離は積雪期には11.3km、無雪期には35kmで、いずれの調査においてもシカが確認され、発見頭数は8_から_162頭であった(図)。このうち、一例として11月28日の調査野帳を表に示す。
肉眼による視認では、目の反射は確認できても、角の有無、個体の大小などが確認できない場合が度々あった。また、シカの向きによっては目の反射がなく、確認できない個体もあり、多頭数の場合は数の把握が困難であった。しかし、DVCでは、夜間撮影・ズーム機能を利用することで、モニターで以下のことを視認できた。
・個体の大小・角の有無などが確認できた。
・目の反射のない個体が確認できた。
・頭数の確認が容易になった。
さらに、テレビなどの大画面で再生した撮影画像では、これらの判定がいっそう容易になり、音声記録(数のカウントなど)の効果も併せ、精度が向上した。
夜間撮影モードではピント合わせが遅くなるため、急峻・藪など条件の悪い場所では操作に手間取るうちにシカが逃げてしまい、撮影し損なうことも多かった。しかし、シカの発見・識別率が総じて向上するなど、DVCの効果は大きかった。これを用いることで、初心者でも比較的信頼性の高いスポットライトセンサス法による調査が可能になると思われる。

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© 2004 日本林学会
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