日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P4016
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樹病
九州大学北海道演習林におけるカラマツ根株腐朽木の経年変動
*小林 元鍜治 清弘中井 武司岡野 哲郎
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抄録

1.はじめに カラマツはトドマツに次ぐ北海道の主要造林木であり、十勝地方を主な生産地の一つとする。九州大学北海道演習林においては、カラマツ林はおよそ1,000 haと、全人工林面積の8割近くを占める。カラマツは材質腐朽菌への感染に弱いことから、高齢林分においては、生立木の腐朽が懸念される。九州大学北海道演習林の53年生カラマツ林においても、皆伐跡地のおよそ4割の伐根に根株の腐朽が見られた(小林ら、2003a)。本研究では、23年生から54年生までの林分で根株腐朽木の発生を調べ、加齢による立木腐朽の進行について検討した。2.材料と方法 北海道足寄郡足寄町にある、九州大学北海道演習林を対象とした。本演習林においてはカラマツの伐期齢を40年生以上に設定しており、主伐までに切り捨て間伐を2回(9年生、15年生)、生産間伐を3回(24年生、31年生、38年生)行っている(小林ら、2003b)。本研究においては、伐採本数が100本を越える生産間伐林分を対象として、間伐跡地の伐根における根株腐朽の有無を調べた。原則として各林分において全体の2割以上の伐根を調査するようにした。また、50年生以上の林分については皆伐林分を対象とした。調査林分数は、23-24年生が5林分、31-32年生が5林分、37-39年生が6林分、53-54年生林分が3林分で、調査は2002年から2003年にかけて行った。また、32年生および54年生の一部の林分では、伐倒した腐朽木の幹を根本からおよそ0.3 mの間隔で玉切りして、樹幹のどの高さまで腐朽が進入しているか調べた。3.結果と考察 表-1に根株腐朽木の割合を林齢別に示した。腐朽木の割合は、23年生から39年生までの林分では6.8%_から_13.3%と少なかったが、53-54年生の林分では41.9%と多かった。各林齢とも腐朽木の割合には大きなばらつきが見られた。 図-1に根株における腐朽径と樹幹部における最大腐朽高との関係を示した。樹幹部の最大腐朽高は、根株の腐朽径が大きくなるにつれて高くなった(r = 0.327,p < 0.01,n = 83)。また、最大腐朽高は54年生林分が、32年生林分より高く、54年生林分では腐朽高が根株腐朽径の10倍を越えるものも見られた。 以上の結果をまとめると、間伐林分と皆伐林分の比較からは、標本抽出の方法が異なるためにはっきりと結論することは出来ないが、本演習林においてはカラマツの立木腐朽は40年生以降に大きく進行している可能性が示唆される。今後、カラマツ林の長伐期施業を行う上で、このことについての充分な配慮が必要となろう。引用文献小林 元・鍜治清弘・馬渕哲也・岡野哲郎(2003a)九州大学北海道演習林の53年生カラマツ林における心腐れの状況.日林北支論51:79-81.小林 元・鍜治清弘・馬渕哲也・岡野哲郎(2003b)九州大学北海道演習林におけるカラマツ林作業と高齢林分における心腐れの状況.森林保護289:2-3.

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© 2004 日本林学会
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