抄録
スギの採種園、採穂園を適切に管理するために、様々なDNAマーカーが開発されている。しかし、葉緑体DNAマーカーを開発するための知見は少ない。葉緑体DNAは、ハプロタイプであり、スギでは父性遺伝する。このため、変異情報を分析することで、親子鑑定や父性系統関係の解明が可能になる。我々は、葉緑体ゲノムの変異を包括的に分析する葉緑体ゲノムタイピング(CGT)システムを構築し、実用化を目指している。九州では、在来品種と精英樹の系統関係が長年問題となってきた。これまで、核DNAマーカーを用いてこの関係を明らかにすることを試みてきたが、核ゲノム情報に葉緑体ゲノム情報を加えることで、さらに詳細な系統関係の解明ができると考える。CGTシステムを構築するため、スギの葉緑体DNA上のVNTR領域で53プライマー対を設計した結果、44VNTRが多型であった。本研究では、このCGTを実際に用いて、福岡県の在来品種と精英樹の品種鑑定を行った。その結果、福岡県の在来品種と精英樹においても高いCGT多型性が認められた。また、供試サンプルの多くが、これまで核DNAによって明らかにされた系統関係と同様の結果を示した。