育成天然林施業では、伐採・収穫時点で更新稚樹が存在すれば更新完了とする。前生稚樹を跡継ぎとして仕立てるには、攪乱発生時期と対象樹種の成長周期・環境応答に関する情報が必要である。しかし、ホオノキ、ブナ、ミズナラで見られるように、葉の柵状組織の層数が前年初夏の更新稚樹の生育光環境によって決まっている樹種があり、また、被陰下におかれると根の発達が悪いため、攪乱直後の光環境に直ちに応答できるとは限らない。 ウダイカンバ若齢林に更新したヤチダモ稚樹を対象に、上層木を除く時期を暴風雨の襲時期である7月上旬と9月上旬に設定し、その後のヤチダモ稚樹の光合成、地上部・地下部の成長量を追跡した。土壌の含水率は7月疎開区で2年目までやや増加した。簡易イン・グロース法を用いて根の成長を追跡した。細根(約2mm<)の旺盛な増加は上木疎開後2年以上経てから明確に認められた。上木疎開の効果は肥大成長で7月処理では9月処理より早く始まり、光合成と連動し、伸長成長は7月処理で翌年、9月処理では翌々年から始まった。ヤチダモの場合、9月の攪乱からの再生には丸2年を要することが解った。