抄録
森林におけるCsの動態を明らかにするため、空間線量30k-60kBq/m2の栃木県日光市でニホンジカ80頭を捕獲した。測定部位は、筋肉、心臓、肝臓、肺、腎臓、胃内容物、直腸糞、羊水、胎児とした。70Bq/kg未満の測定値は検出限界(36~69Bq/kg)と検出限界未満(35Bq/kg以下)に分けた。奥日光、足尾ともほぼ同じ蓄積傾向を示し、筋肉が最も高く、奥日光では平均75Bqで、100Bq越えた個体は12%であった。足尾では平均49Bqで、100Bq越える個体はなかった。臓器類は検出限界で、腎臓>肝臓>心臓の順に低下した。肺、胎児、羊水は検出限界未満であった。また、胃内容物と直腸糞は高い値を示し、直腸糞は胃内容物の4倍から5倍の値を示した。また、直腸糞と筋肉には有意な相関は認められなかった。これは、直腸糞が胃内容物と同じく直近の採食物のCs値を反映するのに対して、筋肉や臓器類は代謝の影響を受けた結果と考えられた。一方、当地域の主要食物であるミヤコザサの葉は平均249Bq/Dwであったことから、採食によって常に放射性Csが摂取されていると言える。