抄録
埋土種子は森林の種多様性維持に重要な役割を果たすと考えられている。しかし、遷移段階の異なる森林ではその組成が変化することが指摘されており、その後の実生更新にも影響を及ぼす可能性がある。本研究では都市近郊林での遷移進行が埋土種子組成やその後の実生更新に与える影響を明らかにすることを目的とし、京都市宝ヶ池丘陵の落葉広葉樹二次林とコジイが急速に拡大する常緑広葉樹林、京都市東山のシイ属が優占する常緑広葉樹林で採取した土壌を用いて発芽試験を行うとともに、林冠下・ギャップにおいて放置・地掻き状態での実生消長を追跡した。 発芽試験の結果、宝ヶ池落葉広葉樹二次林で16種1219本、東山常緑広葉樹林で17種1638本を検出し、種子散布型別ではそれぞれ風散布型が92%、鳥散布型が98%を占めた。一方、近年急速に拡大した宝ヶ池常緑広葉樹林では17種419本と、半数以下の本数になっていた。実生発生は地掻き状態でいずれの林分の林冠下・ギャップでも増加し、東山常緑広葉樹林で鳥散布樹木の増加が顕著であった。これらには、森林の発達段階の違いや都市林特有の断片化による種子散布の変化が影響している可能性が考えられた。