抄録
日本では1950年頃から1980年台初頭頃までに集中的に人工造林が行われ、その後、人工造林面積が大幅に減少してきた。そのため現在では7齢級から13齢級までの人工林が人工林の大部分を占めていて、14齢級以上の高齢林も6齢級以下の若齢林も少なく、齢級構成に著しい偏りがある。主伐面積、造林面積ともに人工林面積に比べて著しく小さい状況が続いている。しかし、素材生産量の平準化という観点からは、このような齢級構成の偏りは必ずしも問題にはならない。木材供給の持続性や、育林部門を含む林業就業の安定性は目的として考慮されるべき要素であるが、平準化された齢級構成の早期実現自体を目的にすべき根拠は明確ではない。次世代林分の伐期の中核部分の始まりを50年生程度と想定するならば、50年後の資源齢級構成の違いと、現存林分の伐採収益と次世代林分の造育林費用等に基づいて、今後のより適切な主伐面積、造林面積は算出できる。木材需要に対応して、経済性原則で主伐生産量を増加させることは望ましい。一方、収益性なしに若返りを促進することは、50年後の資源齢級構成から見て、それだけの便益があるといえるかどうかが問題である。