滋賀県と岐阜県の県境に聳える伊吹山(1,377m)は、古来から霊山として信仰を集める一方で「薬草の宝庫」と言われてきた。暖温帯林と温帯林、太平洋側と日本海側の植生の境界に位置するため1000種類を越える豊富な植物が確認されており固有種も多い。 伊吹山の東山麓に位置する岐阜県揖斐川町の春日地区は近世から「採薬の村」と呼ばれてきた。伊吹山麓に自生する薬草を採取あるいは栽培(半栽培)した薬草を利用して生活の中で飲用、食用、薬用等に利用してきた。明治時代から昭和戦前期までは伊吹薬草保護会という組織を持ち滋賀県側の薬種問屋へ販売することで山村の複合的な生業の重要な一角となっていた。こうした「薬草文化」と複合した山村の生業形態と資源利用の複合形態の変遷について文献調査およびヒアリング調査によって明らかにすることにより、現在の山村景観のなり立ちの基礎を考察することを本発表の目的とする。