降雨-流出予測の精度向上のためには、流出に対する空間スケールの影響を理解する必要がある。これまでに102km2未満の流域で平水時の比流量を主流・支流で面的に調査した事例は、1km2程度までは流域間のばらつきが大きいが、平均値は流域面積によらずほぼ一定としてきた。しかし調査事例が少なく、さらなる観測事例が必要である。そこで東京大学秩父演習林で調査を行った。平水時に10~20ヶ所(0.01~100km2)で面的な流量調査を行った結果、流域面積約1km2までは場所によって比流量が10倍以上ばらつき空間不均一性が卓越していたが、1~20km2では流域面積が大きくなるにつれ概して比流量が増加する傾向にあった。また流域面積の異なる3ヶ所(0.4、2、100km2)で流量の連続観測を行うと、流域面積が大きくなるにつれ洪水時も比流量が増加する傾向にあった。これらの結果より、対象流域では流域面積の小さい流域で地下深部に浸透した水が、流域面積が大きい流域で流出する経路が卓越すると考えられる。このような流域での降雨-流出予測では、101km2スケールで生じる地下水流動を考慮する必要があると考えられる。