近年、林業の成長産業化や労働生産性の高い技術者の育成が重視される一方で、農的なライフスタイルを求めて若者が農山村へ移住する動きが田園回帰として注目されている。本報告の目的は、山村に移住した若者が志向するライフスタイルや農林業観、農林業技術の習得、山村振興の論理を把握することである。事例として、宮城県登米市米川地区に移住し農林畜産複合経営と山村振興を志向する20代男性を取り上げる。調査の結果、移住者は①森林を素材生産の場としてではなく、農業と一体的に利用する空間として認識し、②育成的林業ではなく生活環境の整備として森林管理に携わっていること、③高度な機械化をあえて志向しておらず、④施業技術はNPOや個人のネットワークにより習得していること、⑤山村振興のためにライフスタイルとして農林業を楽しむ価値観の普及を重視していること、⑥そうした価値観や技術を広める役割を担おうとしていること等が分かった。生産性の向上や高性能機械の普及といった評価軸では測れない発展観を持っていると言え、同じような価値観でつながるネットワークがライフスタイルを含めた技術の普及に寄与していることが示唆された。