数十年,数百年に一度の頻度で発生する危険事象については,いかに次の世代へ伝えるのか,すなわち,伝承の方法論が一つの課題である。津波災害から5年後に完全復興を宣言した奥尻島では,可能な限り早期の復旧,復興を目指したため震災遺構の保存は図られなかったと言われる。一方,東日本大震災では,国の交付金により一つの自治体につき一つずつ遺構を保存できることになったが,「見るのがつらい」と解体を求める遺族の声もあり,実際には自治体からの申請が少ないという現状もある。それゆえ,危険事象とその結果として起きる災害をどのように伝えるべきか,震災遺構の役割を含めて検討しておく必要がある。そこで,本研究では,危険事象の一つとして津波を取り上げ,震災遺構,語り部を含めて,津波災害の伝承の方法論について論じ考察することとした。研究方法は文献調査,ヒアリング調査,アンケート調査である。論考から,震災遺構には防災意識を高める役割を持つ可能性があり,防災学習時の緊張感や臨場感を強化することが考えられた。また,震災遺構がなくとも,住民,語り部との交流が同様の効果を生起させる可能性が示唆された。