日本森林学会大会発表データベース
第129回日本森林学会大会
セッションID: T3-7
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学術講演集原稿
高密度なニホンジカを支える冬季の環境収容力
*大場 孝裕山田 晋也大橋 正孝大竹 正剛
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抄録

静岡県の伊豆半島には、ニホンジカの採食圧により植生の衰退が著しい状態でありながら、ニホンジカの生息密度が長い間高く維持されている場所があるが、その理由には不明な点があった。生息密度は12~2月にニホンジカが排泄した糞の粒数に基づき推定しており、食物となる植物が最も少ないと考えられる冬季の生息状況を反映している。そこで、強度に採食圧を受けた植生における利用可能資源量を推定するとともに、飼育試験によりシカの養分要求量を求め、環境収容力を算出した。その結果から、下層植生の資源量が貧弱でも、常緑高木の落葉生葉等により、高い環境収容力が維持されていると考えられた。また、冬季の胃内容物分析結果からは、標高の高い場所で捕獲された個体ほど、胃内容物に占めるササの割合が高かった。一方、集中的に調査を実施した東伊豆町大川のニホンジカの高密度状態が持続している箇所(ササはすでに衰退)の捕獲個体では、イヌツゲの果実が多く検出された。GPS首輪を装着した個体の行動圏の季節移動も認められなかった。

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