富山県の主要観光地である立山は古くから山岳信仰の対象として多くの人を招き入れ、その景観は神聖なイメージに重ね合わせて尊重されてきた。しかし20世紀に入ってから山麓への鉄道等のインフラが整備され、さらに戦後には山岳道路とそれに付随する施設の建設が進むに至って本来の景観は危機にさらされた。これに対し関係諸機関は1967年、立山ルート緑化研究委員会を発足し、植生復元を中心にこの課題に取り組むこととなった。それから半世紀が経過して自然保護地区での緑化をとりまく状況は一変した。そこで立山ルートにおける一次緑化の経過をとりまとめるとともに、生物多様性保全を軸とした環境省の指針(2015)や緑化工学会の提言(2002)に照らして立山ルートでの緑化のあり方について検討したところ、一次緑化の段階から一貫して現地で採取した種子や苗条のみを用いた方法は緑化の実績という面でも、種の多様性保全の面でも高く評価できたが、今後の応用にあたっては遺伝子の多様性保全にも配慮する必要が考えられた。また、生態系の多様性保全の面からは、一次緑化植物の管理と天然更新の誘導技術の開発、そして長期のモニタリングの必要性が明らかになった。