北海道では、カラマツ類優良種苗の普及に向け、グイマツを母親、ニホンカラマツを花粉親とした雑種F1を生産する採種園が整備される。採種園は、生産される種子の雑種率と遺伝的多様性が高くなるように設計されるが、2種を混植させた旧来型の採種園では雑種率の低さが課題だった。一方、単一母樹型の採種園では、若齢段階で雑種率が80%以上と報告されたが、事業的に採種されつつある現在の雑種率やその年変動はわかっていない。そこで、カラマツ属で母性遺伝するミトコンドリアDNAと父性遺伝する葉緑体DNAに着目し、オルガネラDNAマーカーを用いた採種園産種子の診断を本研究で実施した。まず、効率的な雑種判定を可能とするマーカー開発を行った。カラマツ属多検体からのオルガネラDNA配列の大規模網羅的解読の後、配列を比較し、挿入・欠失変異のある遺伝子座を標的としたマーカーを計5つ開発した。このマーカーは種間変異があり、かつ、種内多型がないという条件を満たし、かつ、フラグメント長で簡便な評価ができる利点がある。発表では、2008年以降の5生産年の採種園産種子を用いた雑種率の変動を報告するとともに、作柄や種子サイズとの関連についても紹介する。