主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第131回日本森林学会大会
回次: 131
開催地: 名古屋大学東山キャンパス全学教育棟・豊田講堂
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/30
カツラは主に冷温帯の畦畔域などの攪乱跡地に分布する高木で、マルトールという除草成分を含んだ多くの落葉を周辺に供給する性質を持つ。マルトール(C6H6O3)は麦芽糖等を熱分解した時に生じる麦芽(Malt)の名に由来するカラメル様の香りの揮発性物質で、この除草効果が草本の被度を低減させ、耐陰性が低い稚樹の更新を助けている可能性がある。カツラの落葉の除草効果が顕著な場合、広葉樹林化施業においてカツラの導入は候補となる。しかし現段階でカツラの詳細なマルトール放出量は不明であることから、本研究ではこれを評価することとした。はじめにカツラの黄葉を採取して室温に放置し、4日間、24時間間隔でマルトール放出量を観測した結果、48時間後にピーク放出量が確認された。林床のリターを表層付近の上層と土壌に接する下層に分けて採取し、放出量を比較した結果、下層で前述のピーク放出量と同程度の高い放出量が観測された。さらに同じ樹冠下の斜面上部と下部に各4か所のソイルカラーを設置し、土壌チャンバー法で林床のマルトール放出量を評価した結果、下部で特に高い放出量が認められ、その放出量に大きな変動特性があることが明らかになった。