日本森林学会大会発表データベース
第131回日本森林学会大会
セッションID: A6
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学術講演集原稿
木造文化財建造物の木材利用と修理用材の調達方法―勝興寺を事例として―
*山田 綾音立花 敏茂木 もも子
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抄録

令和元年5月現在、国指定重要文化財建造物は5,033棟でその約8割が木造である。木造建造物の修理を円滑に進めるには修理に用いる木材の安定供給が重要であり、その為の基礎的知見として修理用材の需要の特徴や調達の実態を把握する必要がある。本研究では富山県高岡市の勝興寺を事例とし、まず「構成木材調書」と「補足木材明細書」の分析により修理用材の需要の特徴を把握した。構成部材の化粧材の樹種にはアヒノキアスナロ(アテ)、ケヤキ、アカマツ、スギの順に多く併せて約80%を占め、野物材にはアカマツ、アテ、スギの順に多く併せて90%以上を占めた。アテは石川県を代表とする造林樹種であり、能登半島を中心に造林されている。また、北陸の社寺建築ではアテが多用される傾向があり、勝興寺でも同様であった。勝興寺の保存修理用材の調達の実態は、聞き取り調査に基づくと修理用材は「補足木材明細書」を基に施工業者により愛知県の木材納入業者へ製材品が発注されていた。近年、文化財の保存修理では施工や木材納入において地元企業の協力を重視しており、勝興寺の場合にも木材納入業者はアテ材を扱う地元の製材業者を通してアテ材を入手していた。

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