近年,無花粉スギの原因遺伝子MALE STERILITY 1(MS1)が同定され,雄性不稔となる変異が2種類あることが明らかとなった(雄性不稔アリルms1-1とms1-2)。本研究では,日本各地(20都県)の精英樹等の優良個体や天然スギを対象として,ms1-1とms1-2を一度に識別できるマーカー選抜法を用いて,無花粉スギ育種素材の探索を行った。また,本研究では一部のサンプルについて,複数個体の針葉を混合して抽出するバルクDNAを用いたマーカー選抜を適用し,選抜の労力とコストの削減を試みた。およそ1500個体の解析の結果,新潟県の5個体,山形県の1個体,福島県の6個体がms1-1をヘテロ接合型で保有しており,宮城県の3個体,福島県の2個体,三重県の1個体がms1-2をヘテロ接合型で保有していた。このことは,ms1-1とms1-2は地理的分布が異なり,それぞれにホットスポットが存在するという可能性を支持する結果となった。バルクDNAを用いた解析では,選抜にかかる労力やコストは雄性不稔アリルを持つ個体の頻度に依存するものの,本研究ではコストの約80%を削減することができた。本研究は,生研支援センター・イノベーション創出強化研究推進事業(28013BC)の支援を受けて行われた。