花粉発生源対策に有効な無花粉スギを高精度で選抜するためには、無花粉の原因となる遺伝子を特定する必要がある。しかしスギのゲノムサイズは、ヒトの3.5倍に達する110億塩基と巨大なため、その原因遺伝子を特定することは、これまでできなかった。そこで、雄花で働く遺伝子の発現解析や連鎖地図の作成、突然変異の探索を組み合わせて、これまでになく詳細に分析を行うことで、無花粉を引き起こすMS1遺伝子を特定した。MS1は、脂質輸送タンパク質をコードし雄花で発現する遺伝子(CJt020762)であることが明らかになり、4bp欠失が無花粉スギに特異的に含まれていた。また、ms1対立遺伝子をヘテロ接合で有する静岡県産精英樹大井7では、同遺伝子に30bp欠失が含まれていた。CJt020762は高い遺伝的多様性を示し、育種素材と全国の天然林を含む83個体から49個のハプロタイプが見つかった。さらに30bp欠失は、宮城県石巻天然林の3個体からも検出された。このように、MS1遺伝子を特定し、雄性不稔を引き起こす2つの欠失変異を用いてマーカー選抜を行うことで、日本各地のスギ集団からms1を持つスギ個体を探し出すことが可能になった。