日本森林学会大会発表データベース
第133回日本森林学会大会
セッションID: S2-1
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学術講演集原稿
山地の植生の歴史的な安定性はまだよくわかっていない
*大住 克博
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抄録

現在の森林の構造には、過去の土地利用履歴が自然立地と共に大きく投影している。一般的な認識は、大昔の原生林は人の活動、特に定住に伴って低地は農地化、周囲は二次林化し、更に過剰利用が起きると荒廃地するに至るというものであろう。例えば畿内では、10世紀以前には温帯性針葉樹の巨木が混じる天然林であったところが、現在ではマツ枯れナラ枯れが進行し竹林が拡大した里山に変っている。しかし、変化の時系列的過程や変化を起こした人為攪乱様式は、地域や場所により一様ではない。天然の温帯性針葉樹の伐採時期は、古代から近世まで、地域により大きく異なる。また里山の多くは、中世後半から近世にかけて、一旦無立木地化する。それらは多様な土地利用・人為攪乱により形成され、植生も刈敷採草地、萱場、牧、笹生い地、柴山、荒廃地など多様であった。近世末期から近代にかけて、その跡に森林が再生するが、それらの種構成や構造は、過去の土地利用履歴、人為攪乱様式に対応して様々に変化した。現在の森林の状況の説明に過去の歴史を引用するためには、その場の履歴と植生変化の過程について、十分な検証が必要であろう。

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