日本森林学会大会発表データベース
第133回日本森林学会大会
セッションID: T1-2
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学術講演集原稿
針葉樹人工林の伐採地に保持した広葉樹とその量に対するコウモリ類の応答
*河村 和洋手島 菜花赤坂 卓美山中 聡中村 太士
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抄録

世界各地で天然林が人工林に転換される中、人工林でも生物多様性に配慮した管理が必要とされている。従来の主伐方法である皆伐は森林性生物を激減させるため、生物にとって重要な要素を残して主伐を行う保持林業が注目されているが、森林に強く依存するコウモリ類の応答は不明である。本研究では、北海道中部のトドマツ人工林において、皆伐、広葉樹を単木的に保持して伐採する中量保持(50本/ha)と大量保持(100本/ha)、成熟人工林の4処理(それぞれ3区)でコウモリ類の音声を収集し、出現属数と好む生息地の異なる各グループ(林内、エッジ、開放地)の活動量を処理間で比較した。保持区の属数と林内種の活動量は皆伐区よりも高かった。エッジ種と開放地種でも同様に、大量保持区での活動量は皆伐区よりも高く、成熟人工林と同等であった。さらに、皆伐と比べた大量保持による林内種・エッジ種の活動量の増加量は、中量保持の2倍を上回り、より保全効率が高いことが示唆された。人工林のコウモリ類の保全を進めるためには、大量保持を適用できる地域・条件の解明、少量でも効果のある保持木の選定・配置手法の開発、各地域に成熟林を十分に確保することが必要だろう。

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© 2022 日本森林学会
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