日本森林学会大会発表データベース
第133回日本森林学会大会
セッションID: T3-2
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学術講演集原稿
スギ樹幹基部における雨水及び溶存態137Csの浸透フラックスと樹幹流の影響
*飯田 光加藤 弘亮篠塚 友輝赤岩 哲庭野 佑真Anderson Donovan Aaron恩田 裕一
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抄録

森林樹冠に沈着した放射性セシウムは、雨水や落葉により林床へ移行する。特に、樹幹流は幹周辺に雨水を集中させ、放射性セシウムの蓄積量を増加させることが示唆されている。しかし、森林の水文観測に基づき、土壌への放射性セシウムの流入を定量的に評価した研究はない。本研究は、福島県浪江町のスギ林を対象に、樹幹流、樹冠通過雨、土壌浸透水のフラックスを観測するとともに、溶存態137Cs濃度を測定した。土壌浸透水は、樹幹流の影響が強い樹幹基部 (Rd地点) と樹幹から離れた場所 (Bt地点)を選定し、5 cm深と20 cm深で採水した。観測は2019年9月から2021年11月の期間に実施した。期間中、樹冠通過雨・樹幹流の流入を遮断する実験により、土壌浸透水の変化を観測した。観測結果より、土壌への137Csの浸透フラックスはRd地点で顕著に多く、Bt地点に比べ3倍程度多かった。特にRd地点の20cm深は、樹幹流量とともに土壌浸透水量が増加する傾向を示した。また、樹幹流の流入遮断により、Rd地点の両深度における137Csの浸透フラックスが約70%減少した。以上の結果より、樹幹流が樹幹基部への放射性セシウムの流入量を増加させ、土層深部への移行も促進することが示唆された。

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