森林流域の水収支の主な項目は降水量・流出量・蒸発散量・地下水移動量・貯留量変化である。その中でも流域界を越える地下水移動量は特に観測が難しく、無視できると仮定されることが多かった。しかし、地下水移動量は流域スケールに依存することが近年報告されており、両者の関係を明らかにすることは、様々な流域スケールでの水収支の予測精度を向上させる上で重要な課題である。そこで本研究では、日本の森林流域で観測された160地点の年降水量・流出量のデータを収集し、年降水量から年流出量、蒸発散量の推定値を差し引いた値を地下水移動量として、流域面積との関係を検討した。
その結果、1ha以下の小流域では地下水流出による損失量が大きく、1ha-10haでは地下水移動量の平均値が0に近づくこと、さらに流域面積の増加とともに地下水流入が増加することが明らかになった。また、地下水移動量のばらつきは10ha-100haの流域スケールで最も小さくなった。これらの結果と、流域面積の増加によって降水量の空間不均一性が増大することとを合わせて鑑みると、10ha程度の森林流域での降水-流出量観測が、森林の水収支を検討する際の不確実性が小さくなると考えられた。