抄録
ファジィ制御は人間のノウハウを記述したif-then型のルールと、そのルール群の補間を通して、ヒューマン・マシン・インターフェースを有効に行なえることを最大の特長とした手法であり、熟練者の経験に基づいた制御規則を制御器に取り込むことができるため、さまざまな分野で応用されている。ファジィ制御系においても安定性の保証は重要な問題であり、これまで種々の研究がなされてきた。しかし、それらの多くは数式に依存した安定解析であり、ファジィ制御の特徴であるルールの明示性を活かしたものではなかった。最近、ファジィ制御系を離散近似し、ペトリネットの状態遷移関数に基づく安定解析の手法が提案された。本手法はファジィルールがペトリネットのトランジションと1対1に対応しているため、制御系の挙動を把握しやすく、ファジィ制御の判りやすさを損なわない特徴を持つ。しかし、ファジィ制御系の安定性の検証は、ペトリネットの発火系列を実験的に求めることでなされ、漸近安定性の定理の導出にはいたらなかった。本論文では、ファジィ制御系をペトリネットの状態遷移行列で表現し、ファジィ制御系の漸近安定性の定理を導出する。また、離散近似の妥当性を検証するために、ルール間の状態遷移を数式を用いて解析し、離散近似における安定定理がファジィ制御系の挙動の大筋の把握に有効であることを示す。シミュレーションを行ない、解析結果の検証を行なう。