2001 年 13 巻 3 号 p. 281-291
本研究では、マルチエージェントロボットシステムを例題として各エージェントに進化アルゴリズムをもたせることにより、自律分散エージェントにおいて、どんな知性がどのような創発行動を引き起こすかを検証することを目的としている。ここでは、他のエージェントとの衝突回避行動と個体エネルギー回復のための目標到達行動がともに与えられているマルチエージェントロボットに対し、さらに環境マップ生成という集団行動目標を与え、協調行動学習のための進化シミュレーションを行った。各エージェントロボットは、自己保存のための局所的な個体行動と協調作業のための大局的な集団行動の相反する2つの行動目的を与えられており、さらにエージェントが死滅した場合に最優良個体からのパラメータコピーを行う集団進化のためのアルゴリズムも有している。筆者らは、環境マップ生成を行うマルチエージェントロボットのための進化型行動学習シミュレータを作成し、これを用いて自己保存のための個体行動と集団としての協調行動の割合がエージェントの集団としての行動に与える影響について検証シミュレーションを行った。この結果、均質な行動特性を持つエージェント集団では、協調と単独の各パラメータのバランスに重点をおいた設定をすることによって比較的能力の高い協調行動が発現することが確認できた。