抄録
酸性電解水のイチゴ栽培への適用は、育苗期の炭疽病の防除を中心に行われている。一方、葉が幾重にも重なるロゼット状態を呈し、果実が濡れることを嫌うイチゴの生育期~収穫期での酸性電解水の適用には、散布方法の課題もあり、検討報告は少ない。本実験では、化学合成農薬の使用が制限されるハウス栽培のイチゴ観光農園において夜間のみ微酸性電解水の通風気化を行い、イチゴの生育期~収穫期の有効な病害防除法となりうるかを検討した。その結果、ロゼット状態でも通風気化した微酸性電解水は葉や果実に到達し、浮遊菌数及び葉・果実への付着菌(内生菌を含む)数を抑制できた。また、試験期間中のうどんこ病や灰色カビ病の病微に関して、対照区では両方の発症が認められたのに対し、試験区では両方の発症は抑えられた。さらに、試験区と対照区から収穫したイチゴの保存試験では、試験区のイチゴ果実はカビの発生が1~3 日遅れ、その後の拡大も抑制された。とくに、灰色かび病の原因菌であるBotrytis cinereaに有効に作用していることが観察された。一方、葉の生理障害の指標となるクロロフィル含量と相関するSPAD値に影響はなく、目視でも葉の白化等の副作用は認められなかった。
結論として、微酸性電解水の通風気化法が、ハウス栽培イチゴの生育期~収穫期の有効な病害防除法となる可能性が示された。