抄録
今日の中国園林史の分野においては、方池(あるいは「方塘」)は必ずしも重要な意匠として扱われてはいない。しかしながら、方池が愛好されていたことを記す詩文は少なくない。小稿では、古代中国の方池についての代表的な詩文の内容を紹介分析しながら、とくに南宋の朱熹(1130-1200)の「觀書有感」詩に記された「半畝方塘(小さな四角い池)」の特徴を明らかにする。そして、そのような方池が中国では後世において大いに流行していたらしいことをしめし、中国園林史上における方池の位置づけについては修正が必要であろうことを述べる。日本庭園史の分野においても、小稿でしめすような方池に対する美意識については議論が必要ではなかろうか。