抄録
日本を代表する石庭の一つである龍安寺は、庭の作られた時期や作者が確定されていないばかりではなく、庭の作庭に至った意図についても、多くの説があり、特定されていない。
筆者は2010年、日本庭園学会誌22誌上において、龍安寺方丈庭園の作庭意図は、中国の五台山を写したものであることを記述したところである。
今回は、過去の研究、文献において述べられてきた作庭意図の諸説を、できる限り網羅できるよう取り上げ、その内の有力な説について論じた。その結果、作庭意図が五台山の写しであるとする説については、過去に公表されたものはなく、その他の説については、どの案についても五台山説以上に作庭意図を明らかに示すものであるという説明はできない。