抄録
本論文は、森蘊(1905〜1988)の庭園の調査・研究・保存・修理に関する造園活動の日本近現代における位置づけを検討した。明治期から昭和期における庭園史研究の動向や庭園修理の担い手について全体像を把握し、森の諸活動と比較・考察した。その結果、森の造園活動は、(1)庭園と建築とをセットで研究する姿勢が基本であったこと、(2)日本史全体への位置づけを意識した庭園史研究を展開したこと、(3)庭園の地形を重視した実測調査による旧態の考察をおこなったこと、(4)発掘調査知見を先駆的に活用したこと、(5)調査研究から修理に至るまで、歴史的庭園の保存を系統的に実践したこと、という点が特徴と指摘できる。