抄録
本論文では、江戸時代の「村継ぎ」制度をヒントにして考案された被災地救援システム「村つぎリレー」を、その実施経験を含めて報告する。「村つぎリレー」とは、地域SNS を「村」に見立てて、村から村へと救援物資を追加しつつ運搬することによって、被災地まで救援物資を搬送するシステムである。本論文では、東日本大震災(2011 年3 月11 日)の翌月に、広島県尾道市に始まるリレーで、岩手県盛岡市まで救援物資を運搬した「村つぎリレー」第1 弾と、震災の約半年後に、群馬県桐生市に始まるリレーで、宮城県気仙沼市まで救援物資を運搬した「村つぎリレー」第2 弾について、詳細に報告する。
「村つぎリレー」の経験から、次のような有用性が確認された ---- ①「村つぎリレー」は、被災地から遠い地域の人々でも救援活動に軽い負担で参加することを可能にする。②「村つぎリレー」では、被災地と連携をとりつつ、その都度ニーズを聞いて支援物資を集めて被災地へ届けることによって、被災者のニーズに合致した救援活動を行うことができる。
「村つぎリレー」は、災害が発生した地域に応じて、リレーのノードと進行方向を変えることによって、柔軟に救援ルートを設定することを可能にする。また、ルート沿いの多数の人々が救援に参加することをも可能にする。