抄録
<br> 「自然のふところに抱かれる」という言葉が表すように、自然には、いかなる人間をも区別することなく包み込む大きな包容力がある。自然は嘘もつかなければ、人間に媚びることもしない。人間から見れば、自然の一部となり、自然と一体化するしかない。また、複数の人間は、同じ自然に一体化することを通して、人間同士も一体化する。<br> 本論文は、長年にわたって、子どもたちが自然と触れ合う(自然と溶け合う)活動を展開してきた「大阪自然教室」を紹介する。その数十年に及ぶ活動には、かつて子どもとして参加していたが大人が、今やリーダーとして参加している。そこには、年齢を異にする子ども、世代を異にする子どもと大人、そして自然が溶け合い、その溶け合いを通じて原初的な「意味」が生成される場がある。そのような場が、子どもにも大人にも、自らの「居場所」を与えている。