2019 年 36 巻 p. 3-12
現在、都市から離れた地方は過疎と産業の衰退に対する危機に直面している。その対策の一つとして、その地に特有な産品を取り上げ、地域名をつけて価値づけを行う「地域ブランド」による産業振興と地域活性化が試みられている。本研究では、価値のある産品が、産地に対する居住希望におよぼす影響について検討した。農業・漁業・大学の立地の、3 種の産業と産品を設定したモデル都市に対して、大学生の都市志向、居住希望を問い、居住希望に関わる要因を調べた。その結果、農業と漁業の産品の魅力は居住希望につながるが、参加者個人の都市居住への志向も大きく影響していることが分かった。また大学が立地することは居住希望と関係がないことが判明した。本研究の結果は、優良な産品を有し、それを地域ブランドとして確立することは、地方の人口を増やす対策として有効である可能性を示唆していた。また地域ブランドを利用した新たな居住者の獲得には、あらかじめ都市居住への志向が少ない消費者に対象を絞った働きかけが効果的で現実的であると考えられた。