2019 年 36 巻 p. 14-22
我が国では、地域の産品の価値を高めることを目的として、地域ブランドの確立につながる「地域団体商標制度」が施行された。本研究は、生産者団体に調査を行い、同制度に対する団体としての態度や商標についての位置づけや利用方法についての実情を把握し、検討を加えた。農業協同組合(農協(JA))と漁業協同組合(漁協, JF) に対して、地域団体商標を含めた商標・ブランドについての活動や、それらについての姿勢や態度を尋ね、現場を調査した。農協では地域団体商標の取得を目指してはおらず、商標としては従来の商標登録の利用にとどまっていた。地域団体商標を取得した漁協では、知名度の上昇や取引の増加を期待しておらず、集団のアイデンティティを高めるなど集団内の結束力を高めるために地域団体商標を利用していた。これは制度設計者から見れば、目的とは異なる利用方法がなされていることを示している。その結果、本研究で協力に応じた農協・漁協は、い ずれも地域団体商標に過大な期待を寄せず、むしろ冷静に判断する態度を持っていることが示された。