集団力学
Online ISSN : 2187-2872
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日本語論文(英語抄録付)
旧村単位の住民自治運動に関するアクションリサーチ
樂木 章子
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2021 年 38 巻 p. 20-34

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抄録

 農山村の多くでは、昭和の大合併以前の旧村が、旧村単位の小学校や、旧村単位で行われる運動会や祭りに見られるように、今なお一つのまとまりを維持している。この旧村を単位とした住民自治システムを構築しようとする運動が2008 年から開始され、現在、智頭町6地区のうち5地区(山形地区、山郷地区、那岐地区、富沢地区、土師地区)が順次、地区振興協議会を立ち上げた。この運動は、最初の10 年間は行政から財政的な支援を受けるが、それ以降は、それぞれの地域住民の手による地域経営が求められている。 本研究は、5地区でフィールド研究を実施し、それぞれの活動を追尾し、その地域資源や活動の特徴を筆者の目線から描き出したものである。山形地区では、介護保険によらない地域住民による地域の高齢者のために「森のミニディ」事業を展開し、これが他の地区へと拡大されていった。山郷地区では、防災活動の他、比較的新しい旧小学校校舎を活かした企業誘致に力を入れており、かつ、いち早く、法人格を取得した。那岐地区では、企業誘致や特産品の販売の他にも、地区住民を繋ぐ旧小学校校歌継承活動を開始していた。富沢地区では、障がい者や高齢者雇用の場ともなるキクラゲ栽培力を入れていた。土師地区では歴史資料館を開設し、智頭町内の文化財の保存と展示に貢献していた。それぞれの活動は多様であるが、共通するのは、どの地区も行政からの独立を見据えた地域経営のビジネスモデルを展開しようと試行錯誤している点である。本研究ではそれぞれの地区振興協議会の最新情報を紹介するものである。

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