地学雑誌
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気候の相異による河川営力
スンドボリィ オーケ
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1978 年 87 巻 3 号 p. 115-129

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抄録
この論文は, 異った気候下の河川営力についての一般的議論を含んでいる。自然の河川営力の正当な知識が, 純粋に科学的理由にとって又社会的利益にとって, きわめて重要である。将来の開発について予測し得る環境危険因子の予報は, 物理的計画においては本質的な要素である。水文学的法則 (regime) と沈積物生産とは, 気候によって大きく支配される。併し, それらは又相互に関連し, 殆んど独立していない多数の異った因子によって影響される。植生, 基盤岩石, 土壌条件, 地形, 水路形態 (geometry) が, これらの因子の若干例である。いくつかの典型的な例が, 異った気候地域からあげられる。北極地域において河流の営力に関する永久凍土の影響が議論され, 例証される。湿潤中緯度気候では, 季節性や冬季の雪氷のあり得る存在の影響が, 他のものとの問で, 議論される。乾燥気候においては植生の部分的欠除や, 大量の急激な洪水流の生起が議論され, それらの営力における意義が強調される。乾燥地帯における, 河流営力とくに河床荷重の運搬と地形景観の一般的地形学的発達との問の密接な関係が指摘される。熱帯では, 植生は他の因子と共にかなり重要な役割を演ずる。例えば, 火山地域における「ラハール」の作用は又, 川の性格に関して重要であるだろう。
結語の部分では, いくつかの一般的概念が提示される。基礎的な水力学的作用と河川の営力は, 気候や他の外的条件にかかわらず同じであり (同一性の概念), 又多くの川の営力の率とその地形学的堆積学的結果は直接, 間接に, 気候たとえば永久凍土, 河氷, 雪と植生によって支配される (気候制約の概念) ことが指摘される。すべての川には流量と沈積荷重との間に, 河流の営力と地形発達の一般的性格を決定する均衡及び均衡に準ずるものがある (水と沈積物の関連) 。川の作用は, 又流域の他の部分における条件と作用によっているので, 全流域を複合単位として取扱うことが必要である (基礎的単位としての流域) 。異った頻度と大きさについての地形学的事象の重要性は気候と共に変化する。これは更なる研究の重要な課題である (頻度と規模の関連) 。川の営力における人の影響は, 次第に, より重要になっている。人間活動の影響の予測に充分な方法を開発することが必要である (人間の影響) 。営力地形学は長い期間の地形発達において, 気候や他の因子たとえば人間の影響までを蔽って用いることにより, 有用な語となるだろう。
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