2018 年 13 巻 1 号 p. 27-40
本研究は,タイの首都バンコク周辺地域における地下水塩水化問題に関して,バンコク中心部などにおけるピエゾ水頭の上昇および郊外におけるピエゾ水頭の低下により,広域地下水流動場の変化に伴う塩水化の脆弱性について検討したものである。最初に,ピエゾ水頭が観測されているデータに基づき,対象地における地下水流動場の変化について述べる。次に,地下水の塩水化状況についての考察を加えた。さらに,GALDIT手法により,対象地における地下水塩水化の脆弱性についての考察を加えた。その結果,対象地における塩水化の脆弱性が高い場所として,沿岸部のピエゾ水頭の低下が大きい地域,内陸部では,都心部のピエゾ水頭の上昇,郊外東部のピエゾ水頭の低下に伴い,地下水流動場が変化したことにより,塩分濃度の高い西部や,上層およびチャオプラヤ川沿いの,塩水化の拡大が懸念されることを定量的に示した。