2018 年 13 巻 3 号 p. 171-181
南阿蘇村高野台地区で採取した火山灰質土を対象に,一連の土質試験を通じてその物理特性を明らかにした。熊本地震で地すべり性崩壊を起こした原因の一つと考えられる草千里ヶ浜火山降下軽石を対象に,せん断条件を変えた一面せん断試験を実施し,平常時・地震時のせん断特性を明らかにするとともに,ニューマーク法を用いて繰返しせん断時における強度低下を考慮して地震時安定性を評価した。その結果,草千里ヶ浜火山降下軽石は,平常時においては所定の土被り圧によって生じるせん断応力に比べてせん断強度が大きく十分な斜面安定性を有するものの,粒子破砕を生じやすい地盤材料であり,地震時の繰返しせん断に起因して急激な体積収縮の傾向を示し,結果として定体積条件においてはせん断強度が著しく低下する結果となった。以上のようなメカニズムにより,大規模な崩壊の一因となったと推察された。