2018 年 13 巻 3 号 p. 183-192
筆者らは表層崩壊の事前予測を目的に,室内模型斜面実験により一定降雨強度のもと斜面内の体積含水率の上昇率が変化する時点を捉え,その時点の体積含水率を初期擬似飽和体積含水率(θiqs)と定義し,初期擬似飽和体積含水率を超えた後再び体積含水率の上昇率が変化し,変位が進展することを明らかにした。一方,従来の実験での課題として,作製した斜面の土層厚が100mmと薄く,斜面上部,中腹,下部に設置したセンサの挙動がほぼ同様となり,地点ごとの特徴を捉えるまでには至らなかった。そこで本研究では,土層厚を300㎜とすることで,任意の地点における体積含水率と変位の関係を把握することを目的に実験を行った。その結果,のり尻やそのやや上部では,初期擬似飽和体積含水率を超えた後に変位が発生することが確認されたが,中腹など,設置位置によっては,初期擬似飽和体積含水率を超える前に変位が計測されることもあり,この様な場合,既往の仮説が必ずしも当てはまらないことがわかった。