現行の液状化予測には応力法が広く使われているが,いっぽう液状化挙動は地震応力波形の違いに依らず土中で損失するエネルギーと直結していることが実験的に示されており,エネルギー法の適用性が高いことが知られている。このような背景の下,地盤工学会では2015〜2018年度にわたり世界的にも前例の少ない「エネルギーに基づく液状化予測法に関する研究委員会」が活動した。本文は地盤工学ジャーナル/エネルギー委員会特集号の巻頭言として,委員会報告書をベースに筆者の個人的視点も加え研究展望としてまとめたものである。まず過去40年におよぶエネルギーによる液状化の研究の流れを整理し課題を確認した。次に地盤の液状化エネルギー容量(R側)については,損失エネルギーが水圧上昇や発生ひずみと一意的関係にあり,応力法の液状化強度比とも土質に依らず密接に関連付けられることを原地盤採取試料の試験結果を含めたデータで示すことができた。一方,地震波動エネルギー(L側)についてはその定義法を確認し実地盤での計算例を示した。さらに,R側とL側のエネルギーを対比して液状化挙動を予測するために提案された3種類のエネルギー法を取り上げて仮想均質地盤や実地盤に適用し,従来の応力法や有効応力解析による予測も含め結果の相互比較を行った。その結果エネルギー法相互間にも差異はあるものの,波形特性に関わらず損失エネルギーのみで予測できるエネルギー法の特長が確認でき,地震動の特性によっては応力法と異なる予測が得られた。エネルギー法相互間の差異についてはさらに吟味を重ねる必要はあるが,液状化挙動は本来損失エネルギーにより一意的に決定され,液状化による地盤剛性の変化や地盤沈下なども損失エネルギーにより連続的に評価できる可能性を考えれば,現行の応力法のみに依存するのではなくエネルギーによる液状化予測法も今後の設計指針に取り入れていくべきである。