2021 年 16 巻 1 号 p. 63-73
トレーサー試験は,地下水による物質の移行特性を評価する上で,有効な試験である。しかし,試験や評価が難しいため実施例が少なく,知見が少ない。そこで,原位置を想定したトレーサー試験の基礎的な試験手法とその評価手法について検討するため,試験水槽を用いて試験を実施した。その結果,トレーサー剤のパルス入力を実現する簡易的な投入手法の開発,井戸内の滞留の影響を抑制する上で井戸内の試験区間の容積を可能な限り小さくすることの重要性,試験から得られる有効間隙率や理論解から得られる分散係数を評価するうえで,井戸や測定器(EC計)のサイズや配置などに対する考慮が必要であることが明らかになった。得られたノウハウは今後の現場におけるトレーサー試験への展開が期待できる。