2022 年 17 巻 2 号 p. 135-145
トンネル工事での地下水問題に対応するため,迅速かつ正確な湧水量の予測手法が求められる。このため,岩盤工学的な物性がほぼ一様であり湧水量の変動の小さい地山を対象に,坑口湧水量を予測し,施工に反映する湧水量の予測手法が開発されたが,予測値が観測値より大きくなり,濁水処理設備の規模等に関して過剰設計が指摘されている。原因の一つとして,実現象で発生する湧水の鉛直浸透の影響と切羽前方の地下水位が低下する影響を考慮していないことが考えられる。そこで,本研究では開発された湧水量の予測手法を基に,それらの影響を新たに考慮できるよう物理モデルを拡張した湧水量の予測手法を提案し,岩盤工学的な物性がほぼ一様であり湧水量の変動の小さい既施工トンネルのデータを用いて検証を行った。その結果,精度良く湧水量を予測でき,施工に効率的に反映できる可能性を示した。