2022 年 17 巻 2 号 p. 181-194
本研究では,今後の地中熱利用促進等に起因する地盤温度の変化が土中からの重金属類の溶出特性に与える影響を確認するため,実際の自然由来重金属含有粘土を用いて 10,20,35,50°C の 4 条件で拡散溶出試験を行った結果,実験温度が高く,乾燥密度が低いほど拡散溶出が促進され,前者の影響が支配的であることを確認した。また,全含有量および初期間隙水濃度をそれぞれ用いて算出した拡散係数を比較し,後者のほうが温度の影響をより忠実に反映することができることを示唆した。さらに,溶出フラックスの温度依存性に及ぼす要因として間隙水の粘性が関与している可能性を示唆した。本研究により,地中熱利用技術の導入には温度の影響を考慮した安全性評価を実施し,許容し得る温度変化を明確にすることの重要性が示された。