平成 28 年 4 月の熊本地震では,震源となる布田川断層帯上に位置する西原村において,宅地地盤のすべり崩壊及び擁壁倒壊等の甚大な宅地被害が発生した。宅地地盤の盛土部は黒ぼくが主体であり,盛土下位には赤ぼくが分布し,主にこの黒ぼく盛土と赤ぼくにおいてすべり崩壊が生じた。本稿では,地震の繰返し載荷を受けた黒ぼく盛土及び赤ぼくの強度低下について着目し,宅地地盤のすべり崩壊の発生要因について検討した。黒ぼく盛土及び赤ぼくの物理特性・力学特性等の分析,非排水せん断強さと繰返し載荷を受けたせん断強さの比較検討を行うとともに,水平震度及び強度定数の低下率をケーススタディとした円弧すべり法による再現解析を実施した。検討結果より,地震の繰返し載荷を受けると,高含水比状態にある黒ぼく盛土及び赤ぼく部では,その強度定数が 4~5 割程度低下し,すべり崩壊が発生したと考えられる。