抄録
砂の液状化現象に先立って生じるサイクリックモビリティは,非排水繰返し負荷において,バタフライ形の応力経路,S字形の応力−ひずみ曲線を示す特異現象である。本現象の高精度予測は地盤構造物の耐震設計に極めて重要である。しかし,本現象は1960年のチリ地震や1964年のアラスカ地震,新潟地震以降,社会的注目を浴びて半世紀を経過しているが,今なお,その高精度予測は達成されていない。下負荷面モデルは,弾塑性材料の繰返し負荷挙動を表現し得る基本的構造を有している。本論文では,サイクリックモビリティをも高精度で表現し得るように,本モデルを拡張する。また,本現象の物理的解釈およびメカニズムについて考察するとともに,下負荷面モデルによる定性的表現について述べる。さらに,その有用性を80サイクル超の高サイクルを含む種々のサイクル数のサイクリックモビリティの試験データに対する定量的比較により実証する。