抄録
土構造物の設計において,降雨に対する影響は,浸透した雨水は適切に排除することで対応しており,裏込め地盤内に浸入してくる地下水に対しても同様に取り扱っている。ところが,昨今の気候変動に起因した降雨量の増加や,供用年数の経過に伴う土構造物の材料の風化や細粒分の流出等により,排水機能が十分に発揮できなくなってきている可能性がある。本研究では,降雨時のアンカー式補強土壁の壁裏排水性の有効性を検証しながら,崩壊メカニズムを調べていく。その結果,タイバー設置層の引抜き安全性照査よりも,引抜き力と引抜き抵抗力の総和で計算する補強土壁全体の安全率が,崩壊現象を捉えることが分かった。また,排水層の設置と機能維持によって,飽和領域の拡大に伴う壁面材に作用する土圧の増加を防ぐことができ,補強土の変形を抑制することに繋がることが分かった。さらに,盛土上部から飽和領域が拡大する豪雨時においては,排水処理と共に壁面材同士の接続が重要であることが分かった。