2014 年 9 巻 2 号 p. 287-298
近年,集中豪雨や台風による土砂災害が増えており,防災という観点において補強土壁の定量的かつ長期的な維持管理の重要性はますます増加している.擁壁の設計においても,平成24年度の擁壁工指針は安定照査型設計から性能照査型設計に移行している.そのため,簡易な変位・変形照査方法の確立が望まれる.そこで筆者らは多点同時計測に有利であり,低コストで簡便に計測が可能であるという特徴を持ったデジタル写真測量による変位計測に着目し,補強土壁の長期的な維持管理を目指した.2年間の補強土壁に対する計測の結果,壁面の変位量は壁面の出来型の変形量や管理基準値と比較して微小である事,集中豪雨の影響や施工方法の違いの影響は小さい事がわかった.また,撮影姿勢,撮影枚数,天候といった計測手法における各要因が精度に与える影響について検討した.以上より,デジタル写真測量による補強土壁の長期的観測が充分に可能であり,維持管理手法としての有用性を示した.