抄録
本論文では,これまで明らかになっていない浸透破壊後の土と浸透水の挙動について,それらの移動速度を予測するための理論を展開する。支配方程式は,鉛直上向きの浸透による浸透破壊時の土と浸透水の運動方程式であり,それらは水と土粒子の非圧縮性及び流れの一様性を仮定すると,浸透水と土粒子の速度に関する連立常微分方程式となる。その方程式に対する厳密解及び数値解を求め,浸透破壊後の浸透水と土粒子の速度を予測するとともに,既往の実験事実をもとに土粒子の速度の近似式について考察する。支配方程式を解析した結果は,浸透破壊は限界動水勾配よりも僅かに大きな動水勾配によって急激に進行することを示し,その特徴は,1) 土粒子と浸透水は,浸透破壊中に重力加速度と圧力勾配の増加率に比例して加速すること,2) 土粒子と浸透水の速度は,限界動水勾配時の浸透流速よりも僅かに大きな速度差を保ったまま増加を続けること,を明らかにした。