2023 年 2 巻 p. 1-7
【背景】我々は,中等度・重度認知症における活動に対する取り組み方(Engagement)に対する評価尺度であるAssessment Scale for Engagement in Activities(ASEA)を開発した。本研究の目的は項目反応理論(Item Response Theory; IRT)を用いて,ASEAの各項目の難易度や識別力などの項目特性,構造的妥当性を検証することである。【方法】対象者は精神科病院入院中に作業療法が処方されたClinical Dementia Rating(CDR)の2(中等度)または3(重度)の認知症患者とした。年齢,性別,認知症の原因疾患,Mini-Mental State Examination(MMSE),ASEAを評価した。統計解析として,ASEAの一次元性を確認後,IRTにてサメジマの段階モデルを実施し,識別力,困難度を推定した。統計解析ソフトは,IRTはExametrika Version 5.3,その他の記述統計はSPSSver28.0を用いた。【結果および結論】分析対象者は195名(男性43名,女性152名)であった。IRTによる項目の識別力は0.357~1.419,困難度は-3.317~2.614の範囲で,全ての項目が基準内であった。ASEAは,中等度・重度認知症患者におけるEngagementの評価尺度として構造的妥当性を満たした尺度である。