本研究では,スピーチ課題での他者評価の有無が心理的反応と自律神経反応にどのように影響するのか検討した.
大学生18名を対象にして他者から評価される予告を受ける場合と受けない場合の2回のスピーチを課し,感情や性格特性の質問紙と生理測定を実施した.
その結果,評価の予告を受けた場合の方が安静感情は低下し,否定的感情は上昇した.さらに,心電図RR間隔の短縮とともに,心臓迷走神経活動を反映するHF成分も減少した.また,予告有無における心身の関連性を見た場合に,評価の予告を受けた方が,皮膚血流量は安静感情に,収縮期血圧は肯定的感情の影響を強く受けた.
以上のことから,感情と自律神経反応が関連することにより,他者評価のある状況の方が,心理的変化に伴った自律神経反応の程度を高め,その状況に心身を適応させることが明らかになった.