2025 年 21 巻 1 号 p. 12-26
[要約] 本研究は,バーチャルリアリティ(VR)による3次元森林浴動画視聴が心身に及ぼす効果を明らかにすることを目的に,気分,歩行動作および自律神経機能に及ぼす影響を検証した.対象者18 名に森林浴VR 動画を視聴させ,安静中と動画視聴中に心電図周波数解析を行い,安静後と視聴後にPOMS2 による気分評価と歩行動作解析を行った.その結果,動画視聴中に心電図HF 成分の上昇とLF/HF 成分の低下を認めた.動画視聴後は安静後に比べPOMS2 の怒り-敵意,混乱-当惑,緊張-不安,総合評価の得点は有意に低下し,歩行動作の速度が遅くなり,体重心上下変化,骨盤前後傾斜,下肢関節角度が減少し負担の少ない歩行になった.また動画視聴後には怒り-敵意の気分が低いほど歩行速度は遅いという傾向があった.森林浴VR 動画の視聴は副交感神経機能を優位にして気分を安定化し,歩行動作も安定化させる心身相関の効果を示すことが明らかとなった.