抄録
本研究は,種々の負荷刺激が心身に与える影響を明らかにすることを目的として,精神的負荷課題 (画像視課題・符号課題) と身体的負荷課題 (冷水暴露課題・立ち上がり課題) を与えたときの生体反応を検討した.反応の指標として,心拍のRR間隔 (R-R Interval ; RRI) を用い,同一の対象者 (6名) に各課題 (2課題4種類) を3回繰り返した.さらに各負荷課題の前後に心身の自覚的状況を自覚症しらべと気分プロフィール検査短縮版 (Profi le of Mood States ; POMS) を用いて測定した.その結果,安静時に比べと課題時にRRIは短縮したが,精神的負荷刺激では短縮幅が小さく維持時間も短かった.一方,身体的負荷刺激では,短縮幅が大きく刺激時間内は短縮が維持されていた.一個体に対して安静と負荷刺激を3回繰り返したときの各々のRRIにみられる変化は,課題ごとに変化幅や維持時間は異なるが,安静時に延長し課題時に短縮する反応が再現されていた.次に各課題間の関係では,画像視課題と冷水暴露課題の各RRI変化は高い正の相関を示した.画像視課題以外の3つの課題については,刺激の繰り返しによって生じる反応に再現性が認められた.さらに,各課題前後で心身の自覚的状況を調べたところ,冷水暴露課題の前後のPOMSの総合的感情指標のTMD (Total Mood Disturbance ; TMD) スコアの変化,画像視課題と冷水暴露課題による刺激前後の自覚症しらべの「不快感」スコアの変化と2刺激にみられたRRI変化との間に有意な正の相関が認められた.
以上の結果から,立ち上がり課題,冷水暴露課題のような身体的負荷刺激や,符号課題のような能動的負荷刺激は,繰り返し刺激の再現性が高く,その中でも冷水暴露課題のような強い受動的な負荷刺激が与えられると,刺激は短い時間であっても自覚的に不快を感じて不安定な心身の状況を惹起することが分かった.